奈々は、綺麗だ。
顔や身体だけじゃなく、声も仕草も、性格も。


時々トゲのある言い方をしてくることはあるし、可愛げのないことを言ってくることだってもちろんある。
人間なのだから、喜怒哀楽があって当然。
それも彼女の一部として、丸ごと愛してあげたいと思う。


俺は知っている。
奈々が、社内でもわりと人気があることを。


本社に研修に来ていた新入社員が彼女を見て「美人なお姉さんがいる〜」と目を輝かせていたのも知っているし、支店の男共から「クールビューティー」とかいう変なあだ名をつけられていることも知っている。
そのことに気がついていない奈々は、毎日淡々と仕事をこなして同僚の高槻(ものすごいハンサムな男。でもバイ。ただし彼女持ち)を連れてランチに出かける。


きっと俺なんかよりも高槻の方が見た目として釣り合ってるんだろうな、なんてネガティブな気持ちになることもあるけれど。


そんなつまらない思いは、抱いている時の彼女の言葉で消え去る。


「順、大好き」

「俺も、好きだよ」


何度でも応えてあげたいと心から思う。
彼女が満足するまで。


こんなに好きでたまらないのに━━━━━。







結婚に踏み出せない理由が、ある。