キルフェボンで買った、キラッキラの宝石みたいなフルーツタルト。
それをコズの目の前で食べるのは気が引けたけれど、半べそ顔で「いーよいーよ、食べなよ」とすすめられたので食べることにした。


この4人で何度も何度も飲みに行ったし、勝手知ったる同期ということもありちっとも気を使わない。
まるで幼なじみのような感覚だ。


だからつい、順もからかいたくなったのだろう。
フルーツタルトを須和に渡した時に、ニヤリと笑った。


「柊平、愛しの奥さんにアーンしてやれよ」

「…………………………えっ?」


反応したのは須和ではなく、コズだった。
顔を真っ赤にしてアタフタしている。
そして彼女の口からはいつも通りの威勢のいい言葉。


「何言ってんのよ、田嶋!あんたたちとは違うのよ、変なこと言ってんじゃないわよ!ほら、柊平!早くその一番おっきなグレープフルーツとマスカットとイチゴをよこしなさい!」

「ひと口だけって約束でしょ」

「マ、マスカットを……」


コズがちょっとだけ期待したように須和を見る。
あらあら、親友が珍しく乙女になってるじゃない。
こちらが楽しくなっているというのに、須和は冷静にタルトを皿ごとコズに渡していた。どうぞ、とばかりに。


「なんだよ、つまんないな。お前らほんとに新婚なのか?…………あ、奈々。イチゴ好きだろ?俺のあげるよ」


つまらなそうに文句を言った順は、当たり前のように自分のイチゴを2つ、私のお皿に乗せてくれた。
「ありがとう」とお礼を言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。


「相変わらずお熱いですこと」


そう言ったコズは、結局須和の目を盗んでさりげなくマスカット以外にグレープフルーツも食べていた。
ギロリと夫に睨まれて、慌ててお皿を突き返しているのが面白い。


それから4人で取り留めのない話をして過ごした。
まぁ、須和はほとんど何もしゃべらずひたすら聞き役だったけれど。
コズの笑顔があったから、心からホッとした。