コズがウズウズしたように順の手元をチラ見しながらニヤついた顔で指差す。


「ね、ねぇ……。その箱ってさぁ……」

「あ、そうだ。これ見舞い土産。好きなんだろ、キルフェボンのタルト」

「きゃー!嬉しい!やったぁ!」


ベッドの上でジタバタするコズはこの間の沈んだ様子とは全然違って見えた。
元気いっぱいで、笑顔100%だ。
おそらくこの1週間で気持ちを切り替えたのだろう。


「ちゃんと4つ買ってきたの!みんなで食べよ〜」


しっかり百均で紙皿とフォークも買っておいたから、それをビニール袋から出して準備しようとしたら。
それまで黙っていた須和が一言つぶやいた。


「梢はダメ」

「━━━━━えっ!?なぜ!?」


和気あいあいムードが一転。
コズは「ガーーーン!」という効果音が聞こえてきそうな表情で恨めしそうに須和を睨んでいた。
その視線を振り払うようにヤツはため息をつく。


「昨日先生に言われたばっかでしょ。体重増えすぎだって」

「そ、そうなの!?」


私も順も妊婦の体重なんて気にせずに好きなものを買ってきてしまった。
若干の責任を感じつつコズを見やると、この世の終わりとでもいうようなショッキングな顔をしていた。
なんなら目も潤んでいる。


「そ、そ、そんな殺生な……。ちょっとくらいいいじゃんケチ!半分!半分だけ!」

「ダメ。そう言って今までも食べまくってたでしょ」

「お願いします!!」

「じゃあ俺のからひと口だけ」


2人のやり取りを見て、私たちは思わず顔を見合わせる。
須和がスパルタだ。
なんだかコズが不憫に見えてきてしまった。
でもこれが彼らの温度なのだ。それはこの間のことでよ〜く分かった。