奈々と田島の結婚披露宴真っ最中、歓談中。
盛り上がる会場をこっそり出て、クラッチバッグから携帯を取り出して電話をかける。


私、須和梢は披露宴を堪能しながらもどこかソワソワしてしまって。
こんなに落ち着きがないならばいっそのこと連絡しちゃえ!と思ってこうして抜け出してきたのだ。


コバルトブルーのワンピースの裾が少しめくれていたので、それを手で直しながら庭園がよく見えるガラス張りの巨大な窓をバックに電話を耳に当てた。


『はいはーい、梢ちゃん?どうしたの?』


元気でカラカラとした女性の声が電話に応答した。
私の旦那であり新郎の親友でもあり、今日一緒に結婚式に出席している須和柊平のお母様だ。すなわち私にとっては義理の母。


「あ、お忙しいところすみません!健悟が心配で……。ちゃんといい子にしてますか?」


私の可愛い可愛い息子、健悟。
まだ1歳にもならない、歩く事も出来ない、卒乳していない息子。
その子をお義母さんに預けて、私と柊平は結婚式に来ていた。
もちろん母として大ベテランのお義母さんが大変な思いなんてしてるわけはないと思っていたし、絶大な信頼を置いている。
だけど新米ママとしては、なんとなく息子が気になって仕方なかったのだ。


奈々たちの結婚式はナイトウェディングということもあり、終わるのは健悟が寝たあとになる。
毎日夜の7時にはコテンと寝る息子の生活リズムを考えて、今日は義実家にお泊まりしてもらう予定だ。
二次会までぜひ来てほしいという奈々たちの要望を受け入れて、私と柊平は久しぶりに2人だけで過ごす……んだけど。


最初は「やったー!久しぶりに柊平とのんびり出来るー!」とか思ってたのに、いざとなったら健悟が恋しい私。
もはや女ではなく母なのか。