誰かと相思相愛になることがこんなにも奇跡的で、こんなにも柔らかな気持ちになれるだなんて、課長を一方的に好きだった頃には気づかなかった。
でもあの経験があるから、今のあたしがいるんだと思ってる。


あたしがズバズバと「朝は早く出社して一緒にお茶出し!」「お昼休憩は5分前には戻る!」「電話が3コール以上鳴ったら事務課に任せずに受付でも取る!」と彩に命じたため、彼女はそれを嫌な顔はするもののやってくれるようになり、お互いに仕事の効率も上がってやりやすくなった。


あの頃のあたしが今のあたしを見たら、少しは成長出来てるかな。
成長してるって思いたい。


そのキッカケをくれた、コートで走り回る彼をあたしはじっと見つめていた。











「全身筋肉痛だよ。もう年かな」

「何言ってるの!まだ26でしょ?」

「いや、もうすぐ27だよ……」


フットサルの試合を終えて、夕方には帰路についたあたしたち。
夕飯の食材を買ってこれから彼の家に行くところだ。
彼は背中や腰が痛むのか、しきりに気にしている。


「そっか、もうすぐ27歳なんだね。誕生日プレゼント何がいいかな?」


あたしが聞くと、彼は笑って首を振った。


「美穂と一緒にいられればそれでいい」


彼はこういうことを普通にさらっと口にする。照れもせずに。
照れるのは毎回あたしの方。