自分を変えようと必死になった。


ファッションの趣味も変えた。
フリルやリボンのついた可愛らしいものを控えて、シンプルなものを買った。
大好きな淡いピンクや黄色は差し色に使う。
それだけで鏡で見る自分はがらりと雰囲気が変わった。


趣味がネイルしか無かったから、スポーツジムに通い出した。
週に3回、会社帰りに汗を流して帰る。
これだけで夜はぐっすり寝られるようになり、朝もすっきり目覚めることが出来るようになった。


苦手だった同期の彩の飲みの誘いを、頻繁に受けるようにした。
そうしたら、気が強い彩には意見出来なかったはずが、いつの間にか何でも言えるようになった。


たった1ヶ月で沢山の変化を感じられたのだ。


「ぶっちゃけ、あの噂は本当なの?課長と付き合ってたとか、そういう噂……」


彩は彩なりにあたしに気を遣っているらしい。
もはや週1ペースで飲みに行く仲になったあたしに、遠慮がちに聞いてきた。


「その噂は…………嘘だよ」


もしも、真正面からこの話を聞いてくる人がいたらこう答えようと決めていた。
だから迷いなんて無かった。


「付き合えるわけないじゃない。あの熊谷課長だよ?完全に私の片想い。勝手に私が1人で当たって砕けて、あしらわれたの。それだけ」

「そうだったの……。ドンマイ、美穂。1回の失恋なんか気にしてないで次行きなよ!」

「…………うん。彩、ありがとう」


彼女の雑だけどそれなりに言葉を選んだ「ドンマイ」に、なんとなく笑いを誘われた。