えーーーーー。マジか。
こんなことってあるんだ。
色々覚悟を決めてきたのに、お咎め無しとは。
拍子抜けしたと同時にホッとした。


事務所に戻って、自分のデスクに座って仕事を再開する。
その合間に、チラッと受付の方に視線を送った。


いつも東山さんが座っているはずの受付に、俺の後輩の小巻ちゃんがいる。
そう、東山さんは今日仕事を休んだのだ。
あんなことがあって、ショックで寝込んでいるんだろう。
課長と顔を合わせたくないというのもあるかもしれない。


彼女は会社を辞めてしまったりしないかな。
思い詰めて秋田に帰ってしまったりしないかな。
もうあのキラキラした笑顔を見ることは出来ないのかな。


寂しさを感じながらも、俺は仕事に励んだ。









━━━━━結局、東山さんはその日から3日休み、あとはいつものあの笑顔で出勤してきた。


「神田さん、おはようございます!」


朝早くに会社に来て、みんなのデスクを拭いていたら後ろから元気な声が聞こえて驚いた。
振り返ると、東山さんが以前のような可愛らしい笑顔で立っている。
一瞬幻かと錯覚しそうになった。


「お、おはよう」


上ずった声で返事をすると、湯気のたった熱そうなコーヒーが入ったカップを差し出してきた。
そうか、早い時間だから今事務所は俺と彼女の2人きりなのだ。


「どうもありがとう」


初めて告白してから今までは、避けるように目も合わせてくれなかった東山さんが、今日は真っ直ぐに俺を見ていてくれたから、なんだか心が和む。
カップを受けとってお礼を言うと、彼女はブンブンと勢いよく首を振った。