「早く話せよ」

「……準先輩は、私を嫌いになったんでしょうか?」

「さあな」

「真剣に答えて下さい!」

「真剣に答えてる。俺があいつの気持ちを知ってるわけねぇだろ。ただ……」

ただ?

「あいつの過去を知ってるだけだ」

準先輩の……過去?

「準先輩は、涼先輩と双子で……」

「本当にそうだと思ってんのか?」

だめ

そう思わなきゃいけない。

「俺と準は双子なんかじゃねぇ」

「じゃあ何でそんなに似てるんですか……?」

「俺とあいつが
異母兄弟だから」

異母兄弟?

「俺の父親は最低なやつで、あちこちに愛人をつくってた。その中の一人が準の母親だ」

え……

「信じらんねぇって顔してんな。
けどな、これは事実だ。
そして準は、その母親に虐待をうけてた」

「虐待……」

「もう聞きたくねぇか?」

怖い怖い怖い怖い

気づくと私は自分の体をだきしめていた。

聞くのは、怖い

だけど

「聞く。聞かなきゃいけない」

「……あいつが引き取られたのは五歳のとき。あいつの母親が蒸発して、俺らのところに話がきた。
俺の母親は、喜んでと承諾したよ」

「承諾した?」

何故?

「優しさからだと思っていたんだ」

「違ったんですか?」

「ああ、ただ母親はあいつを痛めつけられるから引き取っただけだった」

「そんなッ」

非道い

「……どうなったんですか」

「その先か?」

私は頷く。

「二人とも消えた」

「……え?」

「カケオチだよ。馬鹿らしい
俺らをおいて消えた。
丁度三年前にな」

自分勝手

本当に非道すぎる。

「それと、準先輩の態度が変わったのに、どんな関係があるんですか」

「大方、母親が現れたってとこだろ」

母親

まさか昨日の人……

「準は親のことでコンプレックスを持ってる。まあ当然だろうな、虐待をする母親、あちこちに愛人をつくる父親、最悪だ。だから準は、お前を遠ざけた」

「何でッ」

「自分の黒いところ、ドロドロしたところを見られたくねぇんだろ」

「そんなのッ関係ない
先輩は優しくてカッコ良くて……」

私は

先輩が大好きだから。

「話したろ。もう帰れ」

「嫌です」

「は?」

「私、もう一度先輩と話します。だから……」

「分かった」

「ありがとうございます」

先輩は優しくてカッコ良くて大好きだから

絶対こんな風に、別れたくない。