「どうしたんだ」

「涼……
何でもないよ」

「嘘つけ。
情けねえ顔して何言ってやがる」

「そんなに分かり易かったか?」

「さあな」

「完全に思い出した」

「母親のことか?」

「ああ」

できることなら一生思い出したくなかった。

「でもそれだけじゃねぇんだろ」

「…うん……
僕が彼女の側にいることは、間違ってるんじゃないかと思ったんだ」

光と影

それは交わってはならないものだと分かっていた。

「別れるのか?」

「別れない」

それでも

彼女の側にいたい。

間違っていようが。

「お前の過去も全て隠して、か?」

「そうだよ」

彼女だけは

手放したくない。

そのためなら

彼女を騙してでも……





離れてほしくない

そう思うから。