「それより敬語、なんとかしろ。」
「うっ。」
それは、この5ヶ月間何度も繰り返された言葉。
これがなかなか治らない。
「あっ、これお母さんが持ってきてくれたお土産な、の…。貰い物らしいんだけど、うちは誰も日本酒飲まないから。」
そう言って、貰ったお酒をとりだす。
あと、グラス。
このグラスは、私がお揃いで買ってきた有田焼のロックグラスで、上品な形と濁りのない純白が二人のお気に入り。
「おお、にごり酒か。しかもなかなか手に入らないやつじゃないか。」
良かった。機嫌は治ったようだ。
「俺も、この前の出張で買ってきたんだ。これならお前も呑めると思う。」
「わあ、社長!ありがとうございます。」
社長が出したのは、焼酎の一升瓶。
透き通る水色の瓶の中には、金粉が浮かんでいる。
ゆらゆらと揺れる金粉をしばらく見つめていると、社長もこちらを見つめていることに気づいた。
「あっ…。」
「敬語はおいおいでいいから、社長はもう止めてくれ。」
切実に言う社長を見ると、罪悪感さえ芽生える。
これは、本気で治さなきゃ。
せっかく治ったはずの機嫌がまた悪くなる前に、夕食を開始。
幸い牛丼は社長の口にあったようで、機嫌もすっかり元通りになった。
結構、単純なんだよね。

