テーブルに広がったのは、社長の元へ置かれるはずだったグラス。
そして、その中身は私の元へと一直線に向かっていたが濡れはしなかった。
それもそのはず。
社長が右腕で水をせき止めてくれていたから。
「申し訳ございません!」
ぺこぺこと謝っている店員さんに、お母さんがおしぼりを持ってくるように頼んでくれている。
「社長、大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。さち、大丈夫か?」
「あ、はい。」
「良かった。」
そう言った社長のスーツの袖はビショビショ。
「ああ、もう全然大丈夫じゃないじゃないですか。」
水が滴るスーツの袖を必死におしぼりで拭き取る。
なぜかこの人、こういことで強がるんだよね。

