いつものように、ボロいアパートで目を覚まし会社に行く準備を進める。


ようやく春が来て、隙間風に悩まされることはなくなった。


でも、下の階に新しく入った大学生が夜中に友達と騒ぐ声がうるさくて眠れないのが最近の悩み。


それを考えれば、隣の大学生は良い子だった。


あの夜、私に扉をぶつけた青年は、後日改めてお詫びに来てくれた。

バイト先のおすすめだという、おいしい海老餃子をもって。


あのときは、私が酔っ払ってたのが、一番悪いのに。

ほんと、律儀な子だったな。


そんなことを思い出しながら身支度を終えると、棚に祀られた神様たちに向かって手を合わせる。


出張のたびに厄除けを買ってくる社長のおかげで、棚のうえがすごく賑やかになった。

有名な神社のお守りから、外国の変な守り神まで。


夏子には、『絶対、神様どうしで戦いが勃発してるから』って言われたけどね。