「しゃ、ちょう…。」


ということは、ここは社長のマンションか。

でも、なんで社長のマンションに私がいるの?


「自分の名前分かるか?」

「わ、かりますけど…。」

「けど?」

「なんでここにいるかは分かりません。そしてこの手の意味も。」


かなり情けない話ではありますが、本当にわからない。


「覚えてないのか?」

「…はい。」

「鼻触ってみろ。」


鼻?

言われるがままに縛られたままの手で触ると、自分の鼻に覚えのない大き目の絆創膏が張ってある。


え、なんで。どこかにぶつけた?


あ、なんとなく思い出したかもしれない。

昨日、赤木さんが呼んでくれたタクシーの中になぜか社長がいたんだ。


そしてお隣さんにドアをぶつけられて、鼻を強打した私を介抱してくれた。