行きの車窓からは、社長が四季を感じたという田んぼが見えたのに。


雨も手伝って、今はもう真っ暗で何も見えない。


行きは、隣の席が社長だったのに。

今は、知らないおじさん。格好から言って、多分出張帰りだ。


真っ暗な車窓に映った車内の灯りがぼやけ始めた。


履いていたグレーのミドルスカートが、涙で染まっていく。


結構な勢いで涙を流す私に、隣のおじさんはギョッとしていたけど、私に話しかけてくることはなかった。


優しいな。まあ、面倒くさいだけかもしれないけど。

でも、そうだとしても有難い。


今は誰とも話したくない。