ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


お互いにお酒が弱いわけではないのに、すっかり深酒してしまい、半ばフラフラしながらタクシーに乗り込んだ。


ぼーっとする頭で、危うく本当のアパートの住所を言うところだった。


殿上人にあんなアパート見せたら絶対引かれる。


どうしてだか分からないけど、社長に引かれたくない、その一心で何とか手前のマンションを指定した。


マンションの前について、タクシーが停車して運転手さんが到着を告げる。


「社長、タクシー代…。」


財布からお金を取り出すと、いいと頭を振って断られたのでお言葉に甘えてお金をなおした。


「すみません。さっきも奢っていただいたのに。」

「いや、こっちこそ今まですまなかった。ありがとう。」

「いえ…。」


今まで、という言葉に胸がきゅっと締め付けられた気がした。


「それに、今夜は変な話までして悪かったな。じゃあ、気をつけて。おやすみ。」

「…おやすみなさい。」


ばたん、と扉が閉まりタクシーが発車する。

だんだんと遠ざかっていく赤いランプをしばらく見つめていた。