「何でですか?」
納得できず、熱燗をちびりながら聞いてみる。
社長に同調しただけじゃないですか。
「だいたい、緊張で味わえてもないんだろう?」
「…そうですけど。」
まあ、確かに。
せっかく分かり合えた感じだったのに。
やっぱり社長は意地悪だ。
でも社長が楽しそうに笑うので、私もつられて笑ってしまった。
それからは、例の不倫相手と勘違いされた事件や、買い物をしていたら万引き犯に間違えられた話などの私のツイてないエピソードを肴にして社長とお酒を山ほど呑んだ。
その時間がどうしようもなく楽しくて、心地良くて。
社長なんて、私にとっては違う世界の人間なのになぜ一緒に居てこんなに心地がいいんだろう。
なぜなのか、分からない。
今はまだわかりたくない。