「唯川さん、そっちも違いますよ」
「え?」
「出口ならこっちです。来てください」
「へ? あ、ちょっ……」
ずんずんと先頭を歩いていたはずの私が、気がつけば三浦くんに腕を引かれて後ろを歩いていた。
三浦くんに引かれてついていけば、あっという間に出ることのできたJEC本部。
……やはり、私は筋金入りの方向音痴なのかと思い始めてきた。
「唯川さん、どうしたんですか? やっぱりあの人と何かあったんですよね」
「え、いや」
「あの……さっきの質問、もう一度聞いてもいいですか?」
三浦くんの言う〝さっきの質問〟というのは、恐らく青柳さんが好きな人なのかどうかということだろう。
三浦くんが勘違いする気持ちも分からなくはないけれど、この勘違いは解いておかないと。
「えっと……あの、青柳さんは好きな人ではないよ」
「本当ですか?」
「うん、本当に。会議前に話したのも、ちょっと人違いしちゃっただけ。今のも、それが気まずくて逃げたかっただけだから」

