Polaris




「唯川さんの好きな人って、あの茶髪の人なんですか?」

「えっ⁉︎ な、なんで?」


会議が終わって三浦くんとJEC社内を歩いていると、突然三浦くんがそんな事を言い出して私は驚いた。


「いや、だって、会議前に話しに行ってましたよね?」

「え、あ……それはそうなんだけど……」


違うよ、と言い終わる前に隣の三浦くんが「あ」と声を出した。何となく三浦くんの視線の先へ目を向けると、そこには噂の青柳さんがいた。

……本当、嫌なタイミングで現れてくれるなぁ。


「三浦くん、行こう」

「え? ゆ、唯川さん?」


私は会議前に自分がしてしまったことの気まずさから、三浦くんの手を引いて足早に歩き出した。

青柳さんの横を俯き加減で通り過ぎ、とにかくその場から離れる。

しばらく歩き続けると受付とは反対側に歩いていた事に気がつき、私は180度回転。そして、また歩き始めた。


「え、あれっ、唯川さん?」


明らかに様子のおかしい私に、後ろから三浦くんが何か問いかけているけれど、今はそれどころじゃない。

ここにいればまた青柳さんに会うかもしれない。とりあえず、会社の外に早く出ないと。