Polaris


黙って男性に着いて行くと、あっという間にエレベーターまで辿り着いた。私はあれだけうろうろしてもエレベーターに辿り着けなかったというのに……。


男性がエレベーターのボタンを押し、しばらくすると私達のいる6階までやって来たエレベーター。それに私達2人は順に乗り込んだ。

5階、4階、3階、と順に過ぎていくエレベーター。

会話も何もないこの空気は、何となく気まずいなぁ……なんて感じていると、意外にも彼の方がこの空気を破った。


「この間の男性はいらっしゃらないんですか?」


私の右隣に立つ男性が、視線はそのまま前を私を向けたままで問いかけてきた。


「え? この間の男性……ですか?」

「この間ぶつかった時にあなたの隣にいた……あの、若くてイケメンの」

「え、あ。ええっと……今日は一人なので」

「はは、そうですよね。見て分かるような質問をしてすみません」


ふわりと笑った彼に、不覚にもドキッとした。

私に何故こんな質問をしたのかはよく分からない。だけど、何となく嫌いじゃないなと思った。


「あの。名前は……」

「え?」

「聞いてもいいですか? 名前」


────ポーン。

『1階に到着しました』