「────ええ⁉︎ そ、そんな……急に言われても無理です!」

「いや、でも今行けるのはプロジェクトメンバーの中でキミしかいないんだよ」

「で、でも……そんな……」

「唯川さんならちゃんとキャリアも積んでるし、丁寧に対応出来るし、頼むよ。本当に」

「う……」

「午前中に、だからね? 頼んだよ。」

「え、ちょ……!」


ポンと右肩を叩き、去っていった上司。

彼が私に手渡してきたのはJECのプロジェクト関係者の方に渡す書類。

午前中にどうしても届けなければならない資料らしいのだが、生憎他の社員は手が離せなかったり、営業に出ていたりして、渡しに行けるのが私しかいないらしい。事情は分かる。でも、それにしても何故私が……。

まぁ、そんなことを思いつつも、選択権なんてない私は渋々会社を出ると、電車でJEC本部へ向かった。


電車で5駅、それから徒歩約10分。

若干方向音痴な私はスマートフォンのナビを頼りに目的地へと辿り着いた。