「……っと、危ない危ない」
「あっ、す……すみません」
急いで身体を離し、ぶつかってしまった人に深く頭を下げた。ゆっくり頭を上げて相手の顔を見ると、私を支えてくれていたのは男性だった。
明るめの綺麗な茶髪は一見チャラそうに見えるけれど、それとは正反対にビシッと着こなされたスーツ。流石はJEC社員だと思わずにはいられない。
スタイルもいいし、あの有名なスーツブランドのCMにでも出られそう……。
そんな馬鹿げたことを思いながら、男性の身体を眺めていた。すると、そんな私の事を、その男性もじっと見ていたことに気がついた。
真っ直ぐ私の目を見つめてきた男性に、私は首を傾げる。
「え……あ、あの」
「あ……っと、すみません。あんまりにも綺麗で見惚れちゃいました。僕は、これで失礼しますね」
男性はニコリと微笑むと、足早に私から去っていく。そんな男性の背中を見ていると、三浦くんが駆け足で私のもとへと寄ってきた。
「唯川さん、大丈夫でした?」
「えっ? あ、うん。大丈夫大丈夫」
「良かった。じゃあ行きましょう」
「うん」
私と三浦くんはその男性に背を向け、真っ直ぐ出口へと向かっていった。

