「さ、支えるって大袈裟な……でも、ありがとう。三浦くん」

何故こんなにも良くしてくれるのかは分からないけれど、私は少し、この優しさに救われたような気がする。

三浦くんは定期を片手に「それじゃあ僕行きますね」と残すと、オフィスから足早に去って行った。


三浦くんの背中を見送り、目の前にある資料をパタンと両手で閉じる。


「……よし、私も帰ろう」


パソコンの画面に映し出されているデータを保存し、電源を消した私はカバンを手にとりオフィスを出た。

ここに居ても家に帰っても同じことだし、それに、三浦くんと話していて少しだけ気が紛れたような気もする。だから、家に帰ろうと思えた。


カバンを手にオフィスを出た私は、コツコツとヒールの音を鳴らして会社の廊下を歩く。歩きながら、無意識のうちにカバンの中のスマートフォンへと手を伸ばした。

本当に無意識のうちにしていた行動だったけれど、スマートフォンの画面を見て私はハッとした。


「え……う、嘘」


ピタリと、足を止める。

そんな私の持つスマートフォンの画面に表示されているのは、メッセージアプリの通知マーク。

しかも、その相手はイツキだ。