「え、それ以上頑張るの? 三浦くんもう既に周りの何倍も頑張ってるのに」


三浦くんの働きぶりは、恐らく営業部男子で一番。私は、彼をピカイチだと思っている。

書店への外回り営業だって、この人当たりの良さと人懐っこさでかなり売り上げに貢献していると噂だし、何より雑務も率先して行っている。

これ以上頑張ってどうするつもりなのだろうか、彼は。と少し心配になった私は三浦くんの母親の気分。


「いや、僕なんて唯川さんに比べれば全然ですよ。唯川さんみたいにもっと頑張らないと」

「え?」

「唯川さんみたいに強くて、自分を持ってて、淡々と仕事をこなす人になりたいんです」

「ええ。いや、私は……」

そんな風に褒められたのは初めてで、何だか照れ臭くなり、視線を床へと移した。

「唯川さん、仕事も出来るし綺麗だし。だからこそ周りから妬まれたりするかもしれないですけど、僕は唯川さんの味方ですから」

「三浦くん」


三浦くんの言っているのは、きっと、今井さんや芹川さんの事。

あれだけあからさまに男性社員を味方につけて私の愚痴を言っているんだ。そりゃあ、三浦くんも知っていて当然だよね。


「僕は他とは違うんで。あんな若さだけに騙されたりなんてしません」

「はは、若さだけって。でも大丈夫だよ。そういうの慣れてるし」

「慣れちゃ駄目ですよ! 何かあったらいつでも相談してくださいね! 頼りにはならないかもしれないですけど……でも!全力で支えますから!」