確かに、今年の旅行に北海道を提案したのはイツキが居るからだ。
イツキに会いたかったというのは本当の事。紛れもなく、私の本当の気持ちだった。
その気持ちをイツキへぶつけたけれど、それは伝わらなくて。……いや、その気持ちを共有してもらえなかったという方が正しいのかも。
まぁ、どちらにしろ可哀想で惨めな私。
でも、頑張ったけれど報われないなんて事はよくある。決して珍しい事ではない。
こんな事でせっかくの北海道旅行を駄目にするのは勿体無いよね。
「詩織、早くー」
「あ。う、うん!」
あわよくば、彼に偶然出会うことが出来るかもしれない。
あわよくば、〝会おう〟と彼から言って貰えるかもしれない。
あわよくば、彼と会って話すことが出来るかもしれない。
〝あわよくば〟〝あわよくば〟
北海道まで持ってきた私のたくさんの下心は、哀しくも報われず。
だから私はココへ、大きな不安と、抱えきれない悲しみと、それから、少しの後悔を残したんだ─────。

