「ねぇ、お菓子でも食べる?」
「お菓子?」
「うん。お菓子持って来たの。まだこっちにもあるよ」
詩織の右手には、ポテトチップス。左手にはチョコレート。それだけでなく、詩織の開いたカバンの中には、まだ何袋かお菓子が入っていた。
「遠足じゃないんだから……」
旅行に行くっていって、こんなにお菓子を持ってくるアラサーが他にいるかなぁ……。
「あはは、確かに。でも、そうは言っても食べるでしょ?」
そう言って私にチョコレートの入った袋を差し出した詩織。私は、小さく一度頷いてチョコレート菓子をひとつ取り出した。
「ありがと」
「いーえ、どういたしまして」
チョコレートをひとつ口内へと放り込み、背もたれにもたれる。
すると、次第に重たくなってくる瞼。それをゆっくりと閉じると、段々と意識は遠のいていった────。

