「詩織。やっと出発するみたい」
「あ、本当? 良かった」
『おはよう』から『おやすみ』まで、日課のようにメッセージのやり取りをして、2日に1回くらいのペースで通話をして、くだらない話をたくさんする。
そんな風にして、まるで隣にイツキがいるような毎日を送っていた。
そんな毎日は信じられないくらい早く過ぎていき、ついに私は今日から北海道旅行だ。
「忘れ物とか無いよね?」
「えっと……ない、はずだけど」
関西空港の飛行機の中。忘れ物が心配になりはじめた私は、ガサガサとカバンの中を探り始めた。
手鏡に、ポーチに、お財布。それから、スマートフォン。手荷物の中身はこんなものだろうか。
あと、着替えや入浴グッズなどはキャリーバッグの中に入ってるし……とりあえず忘れ物は無さそうだ。
忘れ物が無いことをひとまず確認した私は、カバンを足元に置いて詩織の方を見た。すると、詩織は両手にお菓子の袋を持っていた。

