勘が鋭い詩織にこんな適当な言い訳通用するわけがないか……なんて後悔したけれど、時すでに遅し。

若干前のめりになっている詩織の不審そうな目は、私を捉えて逃さない。


「怪しーい。京子、何か企んでるんでしょう?」

「た、企んでなんか……」

「はは、本当に京子って面白いくらい嘘が下手よね」

「な……そんな事ないよ。それに、嘘もついてないしっ」


ストローに口をつけ「まぁ、いいわ」と笑っている詩織は、間違いなく私の中で何かが変わったことを知っている。

いつも力になってくれている詩織に隠し事をするなんて胸が痛いけれど、その時が来たら必ず言おう。

……って、別にネットで知り合いが出来たってだけの話なのに大袈裟か。


「よーし。北海道行こっか」

「え? い、いいの?」


詩織のひと言に、つい立ち上がりそうになった。そんな私のお尻とイスの間には少しの空間が出来ている。

それが詩織にばれないように、私はゆっくりとイスにお尻をつけ、平静を装った。