「え、ちょっ、どうしたの⁉︎ 何で泣いてんの⁉︎ え、キョンキョン⁉︎」

「う……ずみませ……大丈夫です」


服の袖でごしごしと涙を拭いて笑うと、安心したように樹は笑った。


「はは、いきなり泣くからびっくりしたよ」

「すみません……」

「いいよいいよ。本当に大丈夫。えっと、それよりさ……ひょっとして、どこかで会ったこととかある?」

「え……?」


樹の目が真っ直ぐ私を見た。

どう答えた方がいいのか、どう答えるのが正解なのか、それをひたすら考えていると樹が口を開いた。


「……俺、若年性認知症っていう病気なんだ。さっき、キミ、最初に俺の名前呼んだよね。それに、そのネックレス……」

「え……えっと」


樹の視線の先にあるのは、私が去年樹にプレゼントしてもらったネックレス。最初の時点で名前も読んでしまっていたし……もうこれは、正直に答えるしかない。


「あの……実は、私……貴方と付き合ってました。これは、去年、貴方に誕生日プレゼントで貰ったもの……です」


遠慮がちに、でも、ちゃんと事実を伝える。すると、彼は凄く悲しそうな顔をした。