「あっ……て、手伝います」
「あ……ごめん。ありがとう」
起き上がろうとしていた樹の背中に手を回して、起き上がらせた。前より遥かに力が弱まっている樹の体を起こすのは大変だ。
だけど、また0からのやり直しになってしまった二人の関係を、また少し近づけられるキッカケが出来たような気がして嬉しかった。
「ねぇ、キミ、名前は?」
「あ、えっと……唯川京子です」
「ふーん。京子ちゃんね。よし、覚えた」
「いきなり下の名前で呼ぶんですね」
フルネームで答えたけれど、下の名前で呼ばれた私の名前。なんだか懐かしいやり取りに、私は笑いそうになってしまった。
「あ、下の名前で呼ばれるの嫌だった? それなら、えっと……唯川ちゃん、とか?」
「なんでそうなるんですか。なんか、それも嫌です」
私がそう言って笑うと、樹も笑った。そして、唸るようにして悩みながら、私を何と呼ぶかを考え出した。
数十秒考え続けると、彼は何か良い案を思いついたのか、私の方を見た。
「よーし。それじゃあ、キョンキョンって呼ぶことにするよ」
それならいい? と言った樹の言葉に、私は泣きそうになった。だんだんと潤み始める瞳は、ゆらゆらと揺れて霞んでいく。

