Polaris


樹の一言に、やっぱり私の頬は熱くなっていく。

恥ずかしいけれど、真ん前に樹の顔がある以上、この赤くなっているであろう顔の隠しようがない。


「珍しく素直なキョンキョンだから、今日は、俺もいつもよりちょっと素直になろうかな」

「ふふ。本当に?」

「うん。大サービスだからね」

「やった。ちゃんと胸に焼き付けておこうっと」


樹が、少しだけ顔を離した。そして、両腕をゆっくり私の背中に回して、私の右肩あたりに顔を埋めた。


「……ねえ、キョンキョン」

「なに? 樹」


私の肩あたりに顔を埋めて、私を抱きしめるようにしている樹は、少しだけ、親に甘えている子供みたいだった。

可愛いな、なんて思いながら微笑んでいると、樹の震えた声が聞こえてくる。


「俺……本当に、本当に、キョンキョンのことが好き」

「……うん。私も」

「本当に大切で、自分よりも大事で……だから、だから……ずっと、キョンキョンのこと、好きでいたい」


………忘れたく、ない。


そう言った樹の声は、とても震えていて、最後には消えてしまいそうだった。

彼の言葉を聞いて、乾きかけていた私の瞳からは、また大粒の涙が溢れ出した。


私に甘えるようにして、私の胸の中で泣いている樹の初めて見た弱い部分。

そんな彼の涙も、弱音も、本音も、願いも。私は、彼の全部を包みたい。その一心で彼をただただ強く抱きしめた────。