「あはは。可愛いな、もう」
樹の目が細く三日月型になった。
「どこがよ。もう30代なのにみっともないだけじゃない」
樹の言葉に熱くなる頬。それを隠すために私はそっぽを向く。すると、樹がそんな私を覗き込んで口を開いた。
「みっともなくなんかないよ。俺にとっては可愛いの。それよりキョンキョン、顔赤くなってるよー?」
どうしたの? なんて、分かっているくせに聞いてくる彼は悪戯に笑っていた。
「もう。赤くなってない!本当うるさいんだから」
「あはは、本当、林檎みたいに赤くなってるよ。キョンキョン、そういう照れ屋なところ昔から変わらないよね」
「なってないってば、もう。昔も今も照れ屋なんかじゃないし」
「照れ屋だよー。俺、そういうとこも昔から好きだったもん」
「なっ……!はあ⁉︎ 何言って……」
「ほら!照れてる!」
昔から変わらない。そんな風にくだらない言い合いをしては、一緒にたくさん笑う。
今日もそんな風にして同じ時間を過ごし、忘れないようにと胸の奥に強く刻んだ。

