「可愛いナースさんだね」
ナースさんが出て行ったことを確認した後、小さくそう言った私の心は意外と小さい。
樹がシールを私に買ってきてほしいと頼んだ理由を、多分ナースさんは知っている。そう思うと、少しつまらない。
「あはは、そうでしょ? 可愛いよね」
私の気持ちを知ってかしらずか、そう言ってご機嫌に笑った樹に、私の気持ちは更に沈んでいく。
確かに可愛かった。誰から見てもあれは可愛い。何より、若いし。
だけど、そんな素直に『可愛いよね』と共感されるとつまらない。意外と妬いたりするんだなぁ……と私は自分自身に驚いた。
「あはは、キョンキョンがヤキモチ妬いてるぅ」
「……うるさい」
「珍しいこともあるもんだねぇ」
「うるさいっ。バカ樹」
意外にもヤキモチ妬きな自分自身に驚き、それから、少しだけがっかりしていた。
だって、もう31歳になった。こんな年でヤキモチ妬きって……可愛くもなんともないじゃない。

