「ええっと……思い出せなくなっちゃったな……」
困った、と言って苦笑いする樹。
一体樹は私に何を頼もうとしていたのだろう、と思っていると……。
「シール、ですよね」
私の背後から現れた、薄ピンクのナース服に身を包んだ若い女の子。色も白くて、すごく華奢な女の子だ。
「あ……こんにちは」
「こんにちは。あなたが青柳さんの彼女さんですね」
いつも話を聞いてます、と言って笑ったナースさんの言葉に、私は照れながら笑った。
「あ……そうそう。シールだ」
「シール? いいんだけど……シールなんて何に使うの」
「ちょっと色々ね」
内緒、と言って笑う樹に、私は少しだけムッとしたけれど、黙って「分かった。明日買ってくる」と答えた。
「青柳さんの具合はどうか見に来たんですけど……彼女さんもいますし大丈夫そうですね。それでは、後でご飯持ってきますので待っててください」
そう言って私達に頭を下げたナースさんは、部屋を出て行った。

