「唯川さん、こわぁい」

「あの人がここで一番うるさいよねー。きっと、私達が若いからって嫉妬してんじゃん」

「ははは、絶対そうだねぇ」

「本当性格悪いんだけど」


受話器に届きそうな指先の動きが止まる。

彼女たちの方へと視線を向けると、彼女たちは、ついさっきデスクへ向けたはずの椅子をまたもや向かい合わせにして愚痴り出していた。


ちょっと……聞こえてんですけど。


本人達は聞こえてないつもりなのか、もしくは、敢えて聞こえるように言っているのか。

何のつもりかは分からないけれど、私はそんなものは聞こえていないというフリをして、電話へ手を伸ばした。


それは、まるで、私の耳が彼女達の言葉を聞いてしまわないように。

彼女達の言葉が、これ以上入ってこないように……と。


「お電話ありがとうございます。こちら、ナチュラルファクトリー商品受注センター。唯川が承ります」


まるで、彼女たちの言葉から逃げるようにして私は電話を取った────。