Polaris



三浦くんと、樹に会ってくるという約束を交わした数日後。私は街中にどんと立ちそびえているJEC本部の前にいた。

やっぱり広いな、と少し久しぶりに来てみて改めて思う。

でも、そんな事を思っている場合ではない。私には今日、ここでするべき事があって、越えなければいけない壁がある。


ふう、と一度大きく深呼吸をしてから中に入ろうとした……その時。

「あれ?」

背後から聞き覚えのある声。


「あ……こんにちは」

その聞き覚えのある声に振り向くと、そこには眼鏡を掛けたあの男性の姿があった。男性は、驚いた顔をしてから私の方へ近づいてくる。


「どうしたんですか? 仕事……ではないか。もしかして」

誰に会いに来たかなんて、もうバレてしまっている私は返事の代わりに一度だけ頷いた。

すると、彼は「今席外してて……もうすぐ帰ってくるとは思うんだけど……」と辺りを見渡した。


「……あの。青柳の事、もう何とも思ってないんですか?」

「え……?」

「すみません。ちょっと気になって」