あの男性が去ってから、二人で再び歩き出した。だけど、なんだか少し気まずい空気が流れている。

何か話さないと。そう思うのに私の頭の中は樹の事でいっぱいで、言葉が出てこない。


「……本当に、あれだけで良かったんですか?」


この堪え難い空気を先に壊したのは三浦くんだった。彼は立ち止まり、真っ直ぐ私を見た。


「え? 良かったって何が……」

「もっと、青柳さんに言いたいことありますよね?」

「何言っ……」

「青柳さんと会って、ちゃんと話をしてきてください」


三浦くんの口から次々と飛び出してくる言葉に、私はただ唖然とした。


『もっと、青柳さんに言いたいことありますよね?』?

『青柳さんと会って、ちゃんと話をしてきてください』?


「何で、そんなこと……」


三浦くんは一体、何を考えてるの?

三浦くんの考えが全く理解できない私の言葉は途中で詰まってしまう。そんな私の言葉の先を紡いだのは彼。

「言います。ちゃんと、言わせてもらいます。だって、僕がこう言わなければ無理にでも自分の気持ちを抑え込むでしょう?」

という、三浦くんの切なくも強い声。