私と三浦くんを交互に見たあと右手を後頭部へと回して髪を触り、若干顔を顰めた男性は少し間を空けて口を開いた。


「あー………って事は、もしかして、付き合ってるんですか?」

「はい。そうです」


一瞬ドキッとするような質問に、答えたのは私でなく三浦くん。私の様子を少し伺ったあとで、ハッキリと答えてくれた。

私の様子を伺ってはいたものの、三浦くんが堂々と私との交際を認めてくれたことに、私の胸はドクンと弾み出す。

だけど、この幸せな胸の弾みも、次の眼鏡の男性の言葉のおかげで全く違う意味へと変わってしまう。


「これ以上邪魔するのもあれだし、去りたいところなんだけど……青柳から転勤の話って、聞いてます?」


「え………?」


眼鏡の男性は、私を真っ直ぐ見ている。

私に問いかけているということは分かるのに、誰に聞いているのかとか、言葉の意味を理解するまでに少しの時間がかかってしまった。


「もしかしてイツ……青柳さん、転勤するんですか……?」


頭の中を整理して、言葉の意味を予測して、眼鏡の男性にそう返した。すると、当たっていたらしく男性は「やっぱり言ってなかったか」と、小さく呟いた。