「お疲れ様です。京子さん」
私の声に振り向いた三浦くんは、ニコリと微笑んでいた。しかも、早くも慣れたのか、自然に私の下の名前を呼んでみせた。
呼ばれ慣れない下の名前に、どくん、と高鳴る胸の鼓動の中に、三浦くんへの気持ちが入っていることを信じて、私はニコリと微笑み返す。
「お疲れ様。今日は何処に行くの?」
「ええっと……僕も行ったことがないんですけど、口コミでかなり高評価のお店に行こうかと思ってます!」
「はは、それは楽しみ」
いつも、デートの行き先は三浦くんが決めてくれている。
毎回、毎回、私のことを楽しませようとたくさんの事を考えてくれる三浦くんに、私はいつも幸せを感じていた。
私の選択は間違っていなかった。正しかったんだ。私は、こうして三浦くんと会う度に、そう感じることが出来る。
私は、大丈夫。きっと、彼を好きになる。
このまま、私はこの人と幸せになるんだ。そう感じているし、望んでいるのに、どうしてか落ち着かない胸の隅。
この胸のざわめきは、一体何────?

