宮部さんにつられて私も笑い、小さく「ありがとうございます」と返した。その返事を聞いた宮部さんは、残業があるからと言ってすぐに去っていった。
このオフィス内で働く男性社員の中で、唯一私と話をしてくれる宮部さん。
多分、私の見方をしているわけでも、していないつもりでもないだろうけれど、それでも、普通に接してくれていることが嬉しい。
今井さんも芹沢さんも相変わらずだし、やっぱり大変なことも多いけれど、宮部さんのような人が一人でもいるのと、いないのとでは全然違う。
本当に、有り難いなと心から思う。
私は、オフィスを背にして三浦くんと待ち合わせている会社の裏口に向かった。
そこで既に待っていた三浦くんを見つけると、私は急いで彼の元へ駆け寄った。
「みう……じゃなくて、光輝……くん。お待たせ」
前に、プライベートは下の名前で呼び合おうと決めた。その約束事を守るため、私は三浦くんを下の名前で呼んで駆け寄った。
この、初々しいカップルのデートのようなシチュエーションに、この歳でもやはり胸がドキドキしてしまう。