「唯川さん、どうかしました?」

「え……う、ううん。何もないよ?」



〝樹に会わないことを願って〟なんて、そんなの嘘だった。私は、樹に会わない事を願ってなんかいなかった。

……寧ろ、その逆だった。

私は、ここに来てから全く落ち着かなくて、いつになくキョロキョロとしていたと思う。

そんな私の様子と気持ちに、私はもちろん、三浦くんも気がついていた。


「唯川さん……」


切なそうな表情で私を呼んだ三浦くんは、やはり、間違いなく気づいている。

……私が、ここで樹の姿を探してしまっていた事を。

そして、今日を境にしばらくは来ることがないこの場所で、最後に一目会いたいと、そう思ってしまっていた事を。


私って、本当、つくづく最低な女だと思う。

こんな酷くて最低な私なんかが、三浦くんと付き合うなんて……やっぱり、どう考えたっておかしい。


ごめんね、三浦くん。と心の中で何度も何度も謝る。

三浦くんはそんな私の気持ちを知ってか知らずか「気にしないでくださいよ」と笑いかけてきた。