「青柳さん……だっけ? あの、茶髪でイケメンの。昨日ここ訪問した時に唯川のこと探してたけど……知り合いか何かか?」
宇野さんの一言め。すぐに出てきた〝青柳〟という名前に私の胸がドクンと大きく跳ねた。
三浦くんにも聞いていたこの話に、私のバカな思考は再び期待しかけてしまった。
「えっと……一応、知り合いです」
「そうか。なんか話したい事あったみたいだったけど、連絡取れたか?」
「えっと……まだです。また、こっちからまた連絡しておきます」
そう言っておいたけれど、連絡を取るつもりなんてない。……というか、そもそも彼の連絡先を知らない。
宇野さんは、そんな私の返事に「そうか」と返して歩き出す。
これから私達が向かうのは、JEC本部。コラボ商品販売開始前、最後のミーティングだ。
三浦くんの言っていたとおり、このミーティングを境にしばらくは売上の様子を見るためJECへ訪問の予定はないそう。
私は、この販売前最後のミーティングで樹に会わないことだけを願って、歩き始めた────。

