「なぁに。どうして三浦くんがそんな表情してるのよ。今の、そんな暗い話じゃないよ」
ケケケと笑って、私は三浦くんの左肩を右の手のひらで叩いた。
お酒が入っているからか、いつもよりも上手に笑えているような気がした。
だけど……残念ながら、それは〝気がした〟だけだった。
「……嫌です。やめてください。その作り笑い」
「え……?」
自分では作れているつもりだっただけで、本当は全然作りきれてなんていなかった。
私は、それを三浦くんに言われた一言で気づかされた。
「僕、唯川さんの笑顔は好きです。でも、そんな辛いのを隠すための笑顔は見たくないです。嫌です」
「み、うらくん……」
「ねえ、唯川さん」
小さく私を呼んだ三浦くんが、こちらへ顔を向けた。
いつもは爽やかで、所謂イケメンで、可愛いなぁ……と思うくらいの彼の顔。そして、表情。
でも、それが今は不思議とかっこよく見える。変なの。
何だろう。この居酒屋のオレンジっぽい照明のせい? それとも、酔っ払っちゃってるのかな。
なんて、そんな事を呑気に考えていた私の右手を三浦くんがとって握り、私の身体は一瞬で硬直した。思考回路も完全にストップした。

