ああ。いけない、いけない。
きっと樹のことだから、私を探したのに意味なんてないはずだ。多分、用もなく、何となく聞いただけ。
もし、仮に理由があったとしても……私の気持ちは浮いて、また、落とされる。
だって、私と樹は絶対に結ばれない。そう言われたんだから。
「唯川さん……?」
「え? な、なに?」
「あの……やっぱり、唯川さんの好きな人って青柳さんなんじゃ……」
恐る恐る発した三浦くんの言葉。その言葉にギクリとした私の箸を持つ手は、ピタリと止まった。
三浦くんの全てを悟ったような表情。もう、嘘はつけないと思った。
「………うん。実は、そうなの」
もういいや。全部話しちゃおう。
話して、スッキリキッパリ忘れてしまおう。私の抱えるこの気持ちに重く固い蓋をしよう。そう決心した私は、言葉を発したと同時に頷いた。
「やっぱり、そうなんですね」
「うん……でもね、絶対実らない恋なんだ。だから、諦める。もう、彼の事は忘れる事にしたの」
そう言ってヘラっと笑って見せると、三浦くんがとても切なそうな表情をした。

