Polaris



────ガチャ。

「唯川さん!」

「……あ、三浦くん」


定時を過ぎ、黙々と帰り支度を進めていた私の後方から声がして振り向くと、そこにいたのは、恐らくJEC本社から帰ってきたのであろう三浦くん。荷物をまとめたカバンを手に取ると、私は彼へ近づいた。


「今日、お時間ありますか?」

「え?」

「ええっと……良かったら、これから飲みません?」


ダメ、ですかね? と自信なさげに私を見る彼の瞳はくるりと丸くて仔犬のよう。そんな彼の瞳にやられてしまったのか、私は気がつけば首を縦に振っていた。

逆に、この瞳に見つめられて首を横に振れる人なんているのだろうか。いるのなら、その人はとんでもない強者だ。


私の返答に「やった!」と素で喜んでくれる三浦くんに、私は自然と笑顔になった。

そして、本当に三浦くんみたいな人のことを好きになれたらどれだけ幸せだろう。なんて、考えてしまった。