一度立ち止まり、辺りを見渡す。
すると、そんな私の後ろから「まーた迷ってる」と聞き覚えのある声がした。
「こんにちは」
「こ……こんにちは」
振り返るとそこにいたのは、青柳さんだった。
昨日のこともあるし、その前の人違いの件もある。気まずくて、とても私からは話題を出せないでいた。すると、先に青柳さんが口を開いた。
「もしかして、俺のせいで気まずくなっちゃった?」
「え?」
「あの、いつも一緒にいる若いイケメンな子。今日は隣にいないから」
「はい。ご察しのとおり、貴方のせいで気まずくなっちゃいました」
「で、あの子がいないからキミは迷子なんだ?」
あはは、と笑う青柳さんの口調はもう素になっているような気がした。笑顔も、何だか前より自然だ。
「あの、青柳さん。昨日は……どうしてあんなこと言ったんですか」
「えー? んー、何でだろうねぇ」
くいっと口角を上げヘラヘラと笑う青柳さんは、私の質問に答える気などさらさらないのだろう。
なんかムカつく人だなぁ。と思うと同時に、そんな青柳さんの仕草や言動が私にはイツキと重なる。イツキに思えて仕方がない。

