どれだけ頭を回転させてみても理解し難い光景と言葉達に悩まされる私。

ひとつ、考えられるとすれば……青柳さんがイツキであるのではないかということ。でも、そうではなかった。

青柳さんの下の名前は、イツキではなく〝サトシ〟だから。


「僕には忘れさせる自信があります。それに、これは貴方に全く関係のないことです。失礼します」

「え⁉︎ ちょっ、三浦くん……!」


突然、誰かに腕を掴まれたと思えばその正体は三浦くんで、私はその手に引かれて騒がしい人波を足早に歩き始めた。

しばらく歩くと、三浦くんの足がゆっくりと止まっていく。そして、身体ごと私の方を振り向いた。


「さっき言ったこと、本当です。唯川さんの中にいる好きな人を忘れさせる自信があります。例えできなくても……そのまま僕のところに来て欲しい」


真剣に考えてみてください、と頭を下げると私からすぐに去って行ってしまう三浦くん。


私の頭は未だ混乱していて、真剣に考えられるような状態ではない。

でも、三浦くんの気持ちはちゃんと、痛いくらいにこっちに伝わっている。


どうすればいいのか、どう答えるべきなのか……混乱してぐちゃぐちゃの頭の中で、考えて、考えて。


私はひたすら、その答えを探していた─────。