「あ、青柳さん……いつから聞いてたんですか」
「え? ついさっきですよ。『好きな人がいたままでもいい』ってところから、全部、かな?」
「盗み聞きって、趣味悪いですね」
けろっとしている青柳さんに、三浦くんの鋭い一言が矢のように飛んでくる。
青柳さんはそれが気に食わなかったのか何なのか、一瞬顔を顰め、口を開いた。
「こんな公の場で言っちゃう方が悪いでしょ。大体、彼女困ってるじゃないですか」
「困ってるかどうか、何故あなたに分かるんですか」
「分かるよ。表情を見なくたって、声だけでも分かる。大体、彼女には好きな人がいるんだし」
気がつけば、青柳さんの口調がいつもの敬語ではなく会議前に聞いたような口調になっていた。
これが、表向きの青柳さんではなく、素の青柳さんなのだろうか。
「好きな人がいても、忘れさせる自信があります。そうなれば僕にとっても彼女にとっても幸せなことじゃないですか」
「へえ……そう。でも、本当に忘れさせられるわけ? キミに」
怒っているような三浦くんと、何故か挑発的で真剣な眼差しの青柳さん。
青柳さんは、一体どうしてこんな事を言い出したの?
青柳さんが、どうしてそんな風に私のことで真剣な表情をしているの?

