私はドアの横にあった取っ手に手をかけ、ガチャガチャとするが、当たり前のように鍵がかかっていて開くことはなかった。


「諦めろよ」


桐谷が素っ気なく言うと、私は無駄な抵抗をやめ、手を引いた。


「どうして私なのよ。喜んで婚約者役なんてやってくれる女の子、アンタの周りにはたくさんいるでしょうよ」


「まぁいるだろうな」


そこは否定しないんだ。

要所要所コイツの発言にはイライラさせられる。


「だったらほんとになんで私なのよ」


「別に誰でもいいんだよ。ただ一番お前がめんどくさくなさそうだったから」


「何それ……」