「九条、これ……」


そう言うけど、九条はまた自分の本に目を落とし、読書を始めてる。


「家に余ってたから」


私に目線を合わすことなく話しかけてくる九条。


こんな小さいサイズの余ってるわけないでしょ。


しかもピッカピカで絶対に昨日買ったでしょ。


「返されても困るから。早く行けよ」


どうしよう。


すごく、すごく、すごく、


嬉しい。


「あ、ありがとう……大切にするね」


私はもらった上履きをギュッと抱きしめた。



「……何?」


そこには、九条の横にいる桐谷からの痛いくらい突き刺さる視線。


眉間に皺を寄せて私をすごく睨みつけるような。


「べっつに」


不機嫌そうにそう言うと、立ち上がってどこかに行ってしまった。


何だ、あれは。