でも……


私はチラッと廊下側の1番前の席を見る。


私は窓側の後ろから2番目の席だから少し遠いけれど、それでも人を掻い潜ってちょうど彼の姿が見える。


九条海翔。


クラスの中で同じグループの友達がこんなバカ騒ぎしているにも関わらず、彼はその話題の中には入らず、シャンと前を向いて、授業を聞いている。


私はその姿が逆に違和感を感じて、前からずっと気になっていたんだ。


サラサラの黒髪に黒縁メガネ。


顔がとても小さくて、長身で足も長くて学校の机はどこか窮屈そう。


あの時、九条はどうして私のハンカチを持っていたんだろう。


……汚いハンカチなんて言われたけど。


結構お気に入りだったんだけどな。